2025年2月21日金曜日

焼物:「交趾焼」

 「交趾焼(こうちやき)」

華やかな色合いで細かい貫入の入る釉薬のかかった焼き物です。明代後期に中国で作られた三彩陶器です。

ベトナムのコーチシナ(交趾支那)との交趾貿易船でもたらされたことに由来する名前で、ベトナムの名前が使われていますが、実際の産地は中国福建省南部の漳州ということが最近分かったそうです。
日本では、江戸時代に京都から発展。京焼・清水焼を代表する技法としての交趾焼が有名になりました。茶の湯が江戸時代に入り、次第に華やかなものが好まれていった時代背景に合致したといえましょう。茶の湯はすべてわび茶、というわけではないこともなんとなく理解できますね。

成形された生地を素焼きまたは高温で焼き、次に交趾釉を施釉してから、低火度焼成して完成となるそうです。下絵で模様を作る技法として、 彫刻、盛り上げ、椎泥、イッチン、貼付け、線刻、泥化粧など。
黄交趾、紫交趾、緑交趾というように主に使われている色を付けて呼ばれます。

【言葉(参考)】
・椎泥:椎木(しいたき)の樹皮に含まれるタンニンを染料とする。
一珍/一陳(イッチン):スポイト状の道具を使って盛り上げた線文や模様を描く。

(2025.2.20 補)


今日の軸:「冬嶺秀孤松」

 「冬嶺秀孤松(とうれい こしょう ひいず」

如月(2月)・大寒のときに利用されることが多い禅語です。

「ほとんどの樹木が葉を落としている冬の嶺(みね)で、独り青々と葉を残している松が際立っていること」という景色を表しています。
これを禅語として解釈すると、松を仏様の教えとし、どんなものにも惑わされず、煩わされないことを説いています。人の生き方でも、人の心を苦しめる煩悩や欲望に流されることなく、平然と堂々と凛として生きていきたいものです。
単なる景色を謳ったものとしてではなく、その中から人生の教訓を学び取る…なかなか難しいですね。

原典は、陶淵明(とうえんめい))『四時歌』から
 春水満四澤:春水(しゅんすい)四澤(したく)に満ち
 夏雲多奇峰:夏雲(かうん)奇峰(きほう)多し
 秋月揚明輝:秋月(しゅうげつ)明輝(めいき)を揚げ
 冬嶺秀孤松:冬嶺(とうれい)孤松(こしょう)秀(ひい)ず

春水満四澤は、春爛漫のときに使われることも多い禅語です。

余談です。マツ科の松はほとんどが常緑樹ですが、カラマツ(唐松、落葉松とも書く)は、珍しく葉を落とします。日本原産です。この詩にようにはいきませんが、黄色く紅葉し、芽吹きもとてもきれいです。「からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみと見き。」で始まる北原白秋の詩は有名ですし、日本の風景画家として有名な東山魁夷は、落葉松を題材とした作品を数多く残しています。陶淵明が日本人だったら、この詩はどう変わったでしょうか…。

(2025.3.20 談・補)

2025年2月13日木曜日

水屋しごと~その1「茶碗の扱い ①」

  「茶碗の扱い ①」

1.使うときの準備
 茶碗に水やぬるま湯を入れ、茶碗の内と外をていねいに洗う。
 少し水を張った茶巾盥に入れ、上から柄杓でお湯をかけるのもよい。
 ただし、楽茶碗などは底の外側に水をつけすぎると欠けてしまうので、数秒でOK。
 乾いた布で押さえるようにして全体をゆっくり拭く。
2.片づけるとき
 茶碗に水を入れ、よごれているところを洗って、水を捨てる。
 普段でも、湯通し(お湯をいれて、すすぐ)し、乾いた布巾で丁寧に拭く。
 陰干ししてから、箱に入れる。(十分乾かさないとかびて、においがつく。)
 楽茶碗などは箱に入れるまで少なくとも2~3週間陰干し。
3.箱にしまうとき
 十分乾かしてからしまう。
 布や薄紙に包んで、箱に入れる。箱の中で茶碗が動かないように、隅に薄紙を
 まるめて入れたり、ながい短冊状に折って、二本をたすき掛けにして端に詰める。
 箱も風通しの良いところに置く。
4.箱の紐の結びかた
 先日の結び方は、「四方右掛け」。右上に四角を作る。「四方左掛け」もある。
 蓋に文字が書いてあると、それに合わせて右掛けになったり、左掛けになったりする。
 最後の蝶結びが縦結びにならないようにする。
(2025.2.6 談)
 

2025年2月10日月曜日

今日の軸:「和敬清寂」

 「和敬清寂(わけいせいじゃく)」

「和敬清寂」は、裏千家では、四規(しき)といい、茶道の根本精神を要約したものです。利休居士が提唱し、江戸時代前期から一般化されたと言われています。

『和』:茶道のすべての基本。茶会では主客双方で心を合わせて茶会を良いものにするためにまず「和」の心が必要です。
『敬』:お互いに尊敬しあうこと。客は亭主にへつらわず、亭主は客に奢らず。互いの思いやりを忘れないように。
『清』:きよらか。目に見える清らかさだけでなく、心の中も清らかであるように。
『寂』:何物にも流されず、どんなときにも動じない心。

・『清』は『静(しずか)』ではないことに注意してください。
・『寂』は、なかなか難しい概念です。『侘び寂び(わびさび)』の『寂』の字です。『わび茶』は、珠光~紹鴎~利休の流れで完成されました。その美意識の根底が『侘び』と『寂び』です。『侘び』は『わぶ』の名詞形で、本来は「気落ちする、心細く思う」というようなマイナスイメージの言葉でしたが、中世になると、不完全/不足の美しさを表現する言葉となります。また、『寂び』は「さぶ」という動詞の名詞形で「古くなる・色あせる」など、やはりマイナスイメージの言葉でしたが、古くなったものが枯れていき、その中に奥深いものや華麗なものが現れるという美意識を表すようになります。折しも中世の「人生の真実を表面的な美しさよりも内面的な充実に求める」という仏教思想に影響され、能、連歌や茶の湯にも精神性が求められていきました。このことから、『寂』は、表面的な美しさ・豊かさより心の美しさ・豊かさを目指す言葉、と解釈されています。
(2025.2.6 補)

今日の軸:「星河清涼風」