2025年3月10日月曜日

お濃茶は

  【お濃茶は】

『茶事』は、亭主が親しい人を招いて行われる茶会で、おもてなし文化の究極のものです。
茶室という特別な空間に入っていただき、炭手前をしてお湯を沸かし、お食事をしていただき、お菓子を召し上がっていただいたあと、おいしい一服の濃茶を差し上げる、その余韻を楽しんでいただくために薄茶を差し上げる、という一連の過程が進行します。(4時間くらいかかります。)その日の茶室の設え・道具の選択、懐石料理などは、この『おいしい一杯の濃茶を気持ちよく飲んでいただく』ためのものと言っても決して過言ではありません。
また、お茶事は、あくまで、正客がメインのお客であって、その日のテーマや設えは正客に向けてのもの、というのが基本です。

このお茶事というイベントの中心となる『お濃茶』ですが、市井のカフェ・喫茶店や公園や神社仏閣でのお呈茶(お茶をさしあげること)では、まず経験することができません。
それでも、都内では浅草などに数は少ないですが、濃茶が飲める茶房やカフェがあるらしいので、もし、見つけたら、入ってみるといいでしょう。そこでは、面倒な作法とかはなしに、お濃茶を楽しむことができるはずです。

濃茶を出すカフェが圧倒的に少ないのは、おいしく濃茶を練る(薄茶は点てるという)のに、結構な技術が必要なのが原因かと思います。使うお抹茶も違います。薄茶は一人前2g(茶杓1杓半)ですが、濃茶は一人分として4g(茶杓3杓)が基準です。使う茶筅も本来は違うのですが、最近はそこまで明確に分けて使う…機会(?)は少ないです?!

お菓子も違います。濃茶のほうは主菓子といいます。練り切り、こなし、饅頭というような種類のお菓子を”縁高(ふちだか)”という重ねられる箱に、一人前として一段に一種1個ずつを入れるのが本来の形です。「こんな大きな箱にお菓子ひとつとは、いくらなんてもおかしいんじゃないか」と思いたくなりますが、上のほうのお点前になると、お菓子は一人前として種類の違う物が3つとか5つとか出ます。そのためにはちょうどいい器の大きさなのでしょう。大寄せのお茶会などで、一人ひとつの場合、一段に同じお菓子を複数並べることもあります。いずれにしても、お作法がありますので、そのうち、しっかり体得しましょう。

一番大事なこと
お濃茶をいただくとき、心得ておかないといけない一番大事なことは、一盌のお濃茶を客全員(高々5人まで)で少しずつ飲むことです。「おもあい(思相)でいただく」と言います。よく「濃茶は三口で飲む」と言われますが、そんな感じです。そのための作法もあり、これもそのうち、しっかり体得しましょう。
もし、体得しないうちに、大寄せのお茶会に行って、濃茶がでてしまったら…お隣の方のやりようを、しっかり真似をして、失礼にならないようにしてください。それも難しかったら「はじめてなので教えてください。」と素直に聞きましょう。お茶人は気配りできる人たちですから、教えてくださるはずです。

2025.3.7 談・補

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