2026年5月29日金曜日

茶の湯で使う扇子の意味

 「茶の湯で使う扇子(せんす)の意味」

茶の湯における扇子は、相手とのあいだに「結界」(境界線)をつくり、敬意とけじめを示すことを意味しています。
「ここから先はあなたの領域です」「私は敬意を払っています」という意思表示です。

武士のあいだで、扇子は古くから“境界を示す道具”として使われていたようで、 茶道ではその思想が受け継がれています。
これをはじめとして茶の湯では、特に、礼儀作法の観点から、昔のしきたり、を受け継いでいることが多々あります。知っていて損はありません。年配者が多い実社会では、そういうしきたりが重要な意味を持つこともあるからです。

ときに、お茶で使う扇子で、暑いからと言ってあおいでいる人がいますが、お茶の扇子は涼をとるための道具ではありません。お茶の席では、開いて使うことは”ほぼ”ないのです!
もしそういう人を見かけたら…見なかったことにしてあげましょう!

扇子のサイズや扱い方や置き方は流派によって違います。 
帯への差し方、畳の上での置く場所、置くときの扇子の向き、扇子を置いたときの礼の仕方などがありますが、実践でゆっくりと身につけてください。

(2026.5.29 補)



2026年5月28日木曜日

はじめての茶の湯のお稽古 2026 ①

  【まずはお客になるための基本から】

・お茶席に入るための持ち物
 扇子、懐紙、楊枝、帛紗(と、あれば古帛紗)を帛紗ばさみにいれて持参します。
 扇子、懐紙、帛紗は、一応、男性用と女性用があります。

 白い靴下を用意し、茶室に入る前に履き替えましょう。
 手拭き(ハンドタオルで可)もきれいなものを持っていきましょう。
 お道具を触ることもあるので、手は清潔にしておきましょう。

・上から何番目のお客になるか:お正客(しょうきゃく、と呼びます。一番の上席に座るお客のこと)は超ベテランの方にお任せし、お詰(おつめ、末客 まっきゃく とも呼びます)は経験者の方にお願いしましょう。お客が沢山いるときは、3番目以降に座ると、安心して茶会を楽しむことができます。

・茶室の入り方
 いろいろなお流派がありますので、これでなければならない、と言うことはありませんが、裏千家流のやり方を覚え、その後は、回りや経験者を見て、臨機応変に対応することも大事です。
 茶室の作りにより、座る場所が違います。相客(あいきゃく。一緒に茶席に入る人)の人を見倣いましょう。
 《基本の入り方:裏千家》
  入口の外に座って扇子を膝前に置き、襖を開けます。(復習:襖の開け方
  中の様子を伺い、扇子を進めながら、中へにじって入ります。
  床前に進みます。(復習:足の運び方。右足?左足?半畳は何歩?
  扇子を前に置いて、一礼。軸とお花を拝見します。(復習:2回に分けて拝見
  道具畳に進み、お釜などを拝見します。(復習:立ち方、足の運び方。右足?左足?

  他の方の邪魔にならない壁側に座って、他の方が座につくまで待ちましょう。
  座が決まったら、扇子を後ろに起きます。(向きがあります。次回以降説明
  茶室の中の歩き方も、注意しましょう。

・回りの方をお手本にしましょう。

・お茶席は、正客と亭主が主体です。お二人の問答を静かに聞きましょう。その上で、お道具などの聞きたいことがあったら、お正客に尋ねてもらいましょう。

「お茶って、決まりがあって面倒くさそう。」と思いましたか?
たしかに面倒くさそうに見えますが、茶席・茶会・茶の湯の秩序を保つために、決まってきたものと考えておいてください。

(2026.5.28 補)

2026年3月5日木曜日

茶事とは

 「茶の湯、茶会、茶事、茶道(裏千家ではチャドウと言います)…」

似て見えるこれらの言葉のうち、今回は『茶事』の話です。

現代で言う『茶事』は、亭主が親しい知人を招いて行う少人数で私的な集まりです。簡単なお食事(懐石料理)がつき、湯を沸かす炭を整え、濃茶をふるまい、薄茶をふるまう、というのがフルコースで、4時間くらいかかります。

お茶を習う究極の目的は、茶事ができる亭主になることと、お茶事にお呼ばれした時に立派な正客ができるようになること、です。

割稽古からはじまり、盆略点前でお点前の基本の流れを知り、お薄のお点前を覚え、お濃茶のお点前を覚え、炭のつぎ方(炭手前)を覚え、お道具の価値を覚え、格と扱いを知り、茶の湯の根底にある気配りを覚え…と、ゆっくりと時間をかけて(時間がかかって?)、茶の湯の修行をして、やっと初めて茶事の亭主ができたときの感動は、得難いものです。

どなたを(正客に)お呼びするか、今日の茶会のテーマは何にしようか(正客に少しでも関係のあることが喜ばれます)、どんな道具を取り合わせておもてなししようか、と考え、おいしい一服のお茶(濃茶)を心を込めて点てる…その一連の行動で、亭主の精神構造も、技の面もすべてが露出してしまう、という恐ろしさもありますが、『明珠在掌』、『私は私』!

【正午の茶事の主な流れ(炉の時期の基本形)】
寄付・席入り(初入り): 待合室で身支度を整え、露地を通り、蹲で手と口を清め、茶室に入って床の間の掛け軸や道具を鑑賞する。
炭手前(初炭): 亭主が炉に炭を入れ、お湯を沸かす準備をする。
懐石(茶懐石): 基本は一汁三菜の料理(追加の料理があることも)とお酒を楽しむ。
       最後に主菓子を戴く。
中立(なかだち): 一度庭へ出て外腰掛で休憩する。
後入り:再度、茶室に入り、茶花などを鑑賞する。
濃茶(こいちゃ): 茶事での最も重要な場面。亭主の練って点てた濃茶をいただく。
炭手前(後炭):炭をついで、再度お湯を沸かす。
薄茶(うすちゃ): 最後に気軽な薄茶を干菓子とともにいただく。
茶事を締めくくる。

お茶事の一連の動きには、規矩(キクと読みます。決まりのこと)や作法があり、これを知らないとお互いの不幸、と言えます。たとえ、流派が違っても、基本は変わりません。それは、茶の伝来時から、紹鴎、珠光、利休と延々と受け継がれた茶の湯で共通のものとして出来上がってきたものですから。

先日『正午の茶事』のDVDを見たとき、懐石のところで「酒盛りしている」と大喜びしていましたが、本来の茶事の目的は、交渉事?

江戸時代初期くらいまでは、現代の料亭にあたる場などはない時代です。殿様たちや豪商たちがいろいろなお付き合い(交渉?)をしようと思ったら、自宅に招いて接待する場を設ける以外ありませんでした。そのときに、酒盛りで盛り上がり、酔いつぶれて/酔い潰してしまったら???
この辺の匙加減も、亭主の裁量と言えるでしょう。
また、接待する側や接待を受ける側が、懐石の最中に、余興として、謡や舞を披露したり、連歌で楽しむ、というようなこともあったようで、そういう教養も必要とされていた時代でした。(日本文化の多様性・懐の深さよ!!! よかった、現代で?)

現代は、「自宅に招いて交渉事」などは、まず、しません/できません。しかし、そんな堅苦しくなく、親しい友人を招いて、茶事を楽しむ、という文化は、継承していきたいものです。

(2026.3.5 記)

今日の軸:「明珠在掌」

  今日の軸:「明珠在掌(みょうしゅ たなごころにあり)」

『明珠』とは、本来は、曇りのない美しい珠、真珠の類を指します。転じて、真の宝や非常に優れた人物のことも表します。
『掌』は「たなごころ」と読み、手のひらのことです。

禅語的には、かけがえのない宝(明珠)は遠くにあるのではなく、すでに自分の手の中(掌中)にある。かけがえのない宝=幸せ・喜び、は自分の中にある、という意味になります。
たとえ今の自分をダメだと思っていても、自分の奥には常に輝く可能性が眠っているという、希望の教えです。自分自身の命の尊さを知り、自分を愛すること。仏教では、この内なる仏性を引き出す修行を大切にするそうです。

「自分には特別何も無いと落ち込む必要はありません。どなたもこの自己の中に光輝く存在、宝を持っているのです。」は、大本山東福寺塔頭 霊源院塔頭の和尚様のお言葉です。

人生の選択の大きな節目に直面しているみんなには、忘れないでいてほしい四字熟語です。

(2026.2.28 談、補)


茶の湯で使う扇子の意味