2024年12月21日土曜日

今日の軸:「関 南北東西活路通」

 【関 南北東西活路通(かん なんぼくとうざいかつろにつうず)】

年末・年始や門出を祝うときなどによく使われる禅語です。
意味は、「難関を通過できれば、その先はどこへでも行ける道が広がっている。」
禅語は難しいですが、なんとなく雰囲気がわかればまずはOKです。


【もう少し詳しく解説】

鎌倉時代に大徳寺を開山した大燈国師が悟りを開いたときの境地を漢詩にしたものの一部です。その漢詩はこちら。
 一回透得雲關了 南北東西活路通 夕處朝遊沒賓主 脚頭脚底起淸風
(意味 https://zenzine.jp/learn/zenpoetry/508/ 参照)
 ひとたび雲門の関を通過し終わってみると、東西南北、あまねく自由自在の活路がゆきわたる。どこにいようとも、いつ何どきも、自分と相手の区別はなく、その足どりは徹頭徹尾、清風を巻き起こすのだ。

「関」という漢字は、もとは ( 門戸をとめる横木、貫木(かんのき)の意から ) 出入りを取りしまるための門のことですが、ここでは悟りに続く関所のことで、「活路」とは生きる道のこと。越えられないと思っていた難関を超えたとき(悟りを得たとき)、東西南北に道が開けるような本物の自由が待っていた、というような意味だそうです。(悟ってない凡人にはわからない境地?)

禅宗では、悟りを開くための修行として座禅と公案などがあります。この公案というのは、禅問答とも呼ばれ、師匠が弟子に与える問です。論理とか思考の枠を超えた直感的な悟りを得るための手段です。大燈国師にあたえられた公案「関」に対する回答が上の漢詩です。

この「関」という公案は「雲門の関」と呼ばれ、中国の仏教書『碧巌録』(公案を100集めたもの)にもあるものです。

【予告】
大徳寺と利休居士の関係も理解しておくことは大事なので、また、そのうちに。

(2024.12.19 談)




2024年12月20日金曜日

今日の茶花から:椿と山茶花(植物学的・雑学)

 【椿(ツバキ)と山茶花(サザンカ)の違い】

両方ともツバキ科の常緑樹。

1.椿(ツバキ)
開花時期: 冬から春(1月から4月)
花の特徴: 花は大きく、色は赤、ピンク、白など。花は全体が一気に落ちることが多い。
葉の特徴: 葉は山茶花より大きい。厚くて光沢がある。縁は滑らか。
樹形: 高さは5~10メートル。

2.山茶花(サザンカ)
開花時期: 秋から冬(10月から12月)
花の特徴: 椿よりやや小さい。色は野生種は白、園芸種には赤、ピング、白。
     花びらが一枚一枚散る
葉の特徴: 葉は椿よりやや薄く、縁にギザギザがある。光沢はあり。椿ほど厚くはない。
樹形: 高さは3~5メートル程度で、椿よりも低い。

【雑学いろいろ】

① ツバキ科は東アジア~東南アジア、ヒマラヤに自生。自生の種類は100~200種類。
② 日本に自生しているものも多い。サザンカもその一つ。
③ お茶の木もツバキ科。
④ 和名の「つばき」は、古事記や万葉集にすでに出てくる。
  『古事記』では「都婆岐」、『万葉集』には「都婆吉」「都婆伎」
⑤ 中国から渡ってきた。江戸時代には人気が出て、上流階級に愛される。
⑥ 19世紀にはヨーロッパでブームになった。
  ヴェルディのオペラ『椿姫』、ココ・シャネルのモチーフなど。
⑦ ツバキの学名はCamellia japonica。
  Camelliaの名前をつけたのは、18世紀のスウェーデンの植物学者 Carl Linnaeus。
  Camelliaはアジアの植物に詳しかった17世紀のチェコの宣教師G.J.Camellにちなむ。
  Camellには江戸時代に日本に来た宣教師がツバキの種をCamellに送ったことから。
⑧ 最近のツバキの園芸種は、花がどんどん大きくなっている。
  サクラツバキは10cmにもなるという。
⑨ 寒椿(カンツバキ)と呼ばれるサザンカもある!
⑩ 椿餅は、『餡を道明寺粉でつつんだもの』を2枚の椿の葉ではさんだ2月ころの和菓子。
  椿餅の原型は、源氏物語「若菜上」にも出てくるとか。

(2024.12.5、12.19 談)


2024年12月9日月曜日

名物裂(めいぶつぎれ)

 【名物裂とは】

お客として茶席に入るときの持ち物の話のときに、古帛紗の話になりました。
お点前で古帛紗を使う機会は、まだまだ出てきませんが、その裂地(きれじ)のお話です。

同じ読み方になりますが、『名物切』となるとまったく別の意味ですので、注意。

名物裂は本来は、中国の宋から清(前期)時代に渡来した絹織物や、南蛮渡来の絹や木綿織物です。
金襴・緞子(どんす)・モール・間道(かんとう)・更紗(さらさ)などの種類に分類されます。
模様は、図像や花や動物を模したものから幾何学的なものまでさまざまです。

茶の湯では、帛紗や仕服(茶入などの道具をいれる袋)に使われます。また、掛け軸の表装にも使われます。

道具の拝見のときの問答で「お裂地は?」という問に対しては、「朱地 笹弦 緞子(裂の色-模様の名前-織の種類)」というように答えるといいでしょう。
自分の知っている模様や、有名だけれど見たこともなかった模様に出会えると、ちょっと楽しくなります。

(2024.12.5 談)

2024年12月7日土曜日

はじめてのお菓子

お茶を出すときは、お菓子がつきものです。

 【お菓子の種類】

和菓子は水分量で分けられます。
30%以上は「生菓子」、10%~30%は「半生菓子」、10%以下は「干菓子」。

【干菓子】
・素手でつまめるものです。
・薄茶を出すときに使います。
・茶事のときは、最低でも人数分+1個を用意します。たくさんだしてもOKです。
・菓子盆に2種類のせるのが標準です。この場合、右上に格調の高いものを置きます。
・干菓子はいろいろな種類があり、地方の名産品も数々あります。
 帰省したときや、旅行先で探してみましょう。
・種類:落雁、金平糖、かりんとう、和三盆、煎餅、吹き寄せ、麩菓子、有平糖など
・取り方・いただき方(客側):
 菓子器に両手を添えて、軽く押しいただきます。
 懐紙を膝前に置きます。
 左手は菓子器に添えたまま、右手で菓子を右奥、左手前と取り、懐紙にのせます。
 取った指先は、懐紙の角で拭きます。
 菓子器を次客との間の縁外に両手で置きます。
 菓子ごと懐紙を左手にのせてから、戴きます。
 指先を懐紙の角で拭き、一番上の懐紙を菓子くずがこぼれないようにたたみます。
 使った懐紙は、懐紙のたばの内側にいれて、懐紙を懐中します。

【主菓子】
・主菓子は生菓子か半生菓子を使うことが多いです。
・濃茶をお出しするときや、大寄せの茶会では薄茶でも使います。
・一人一個です。
・陶器の器に人数分を入れたり、縁高という菓子器にいれ、黒文字を添え、出します。
 (縁高については、いつか実物で練習しましょう。)
・種類:煉切、道明寺、きんとん、餅菓子、粽、金玉など。
・取り方・いただき方(客側):
 菓子器が回ってきたら、次客に「お先に」と一礼。
 菓子器に両手を添えて、軽く押しいただきます。
 懐紙を膝前に置きます。
 黒文字を右手で上から取り、左手を添えて持ちかえし、菓子を右手前から取ります。
 懐紙にのせ、黒文字の先を懐紙の角でぬぐい、持ちかえして、菓子器に戻します。
 菓子器を隣に送ります。
 懐紙を左手にのせて、楊枝で適当に切りながらいただきます。
 菓子によっては、慣れないと食べにくいので、練習あるのみです。
 楊枝を懐紙で拭いて、懐紙の内側に入れ、使った懐紙を始末し、懐中します。
・りゅうさん紙は、水分の多い菓子がでてきたときに、使います。

【亭主からのお菓子の出し方】
 実践で練習

(2024.11.21/12.5 談)


はじめての薄茶

 【はじめての薄茶の飲み方】(裏千家)

茶道は、禅宗の影響を深く受けており、本来は「不立文字」「教外別伝」が基本です。
両方とも、言葉で伝えられることは限りがあることを示しています。
ですから、字面での飲み方の実技を読んでやってみるより、実践のおけいこで、
その人なりの美しい所作を身に着けるべく、やっていきましょう。

1.(四畳半の場合)にじって出された茶碗を取りに行きます。
2.自席の縁外において、居ずまいを正します。
3.上座の人との間の縁内に置いて「お相伴します」と一礼
4.次客との間の縁内に右手で置いて「お先に」と一礼
5.膝前の縁内に置いて「お点前頂戴いたします」と一礼
6.茶碗を右手でとり、左手にのせ、右手を添えて軽くおしいただきます。
7.茶碗の正面を避けるために、時計回りにに二度まわします。
8.茶碗を3点で押さえて、お茶をいただきます。
 茶碗の縁にはなるべく指はかけません。
 これからも茶碗の縁は脆いものと思って扱いましょう。
9.飲みきったら、飲み口を軽く右手の指先でぬぐい、指先を懐の懐紙でぬぐいます。
10.茶碗の正面に戻すため、時計の逆回りに二回まわして、畳の縁外の膝正面に置きます。
11.茶碗を出されたところに、茶碗の正面を亭主にむくように回してから、置きます。

にじりかた、一礼の仕方、茶碗の運び方なども所作のポイントです。

利休七則の七番めに「相客に心せよ」とあるように、お客になったときは、お互いに気遣って、思いやる心を持ちたいものです。

(2024.11.21 談)




はじめての茶花の生け方

 【茶花は奥が深く、一生勉強で、花とはまさに『一期一会』です】

《基本》

・床は、座って拝見するものなので、その目線で生けます。
 特に掛け花や釣り花のときは、注意。

・利休居士の言葉-1
 「花は野にあるように」(『南方録』より。『南方録』の解説は、いつか)
 この言葉は、野にあるようにボサボサに生けていい、という意味ではありません。
 草や木が自然界で生きているさまを格調高く生けましょう。

・利休居士の言葉-2
 「小座敷の花は、かならず一色を一枝か二枝、かろくいけたるがよし」(『南方録』)
 とあります。
 10月の花が少ない時は、5種~7種(奇数)の花を入れて、名残りを楽しみますが、
 それ以外は、2種類の花木か、木と草の取り合わせがいいでしょう。

・花は、今まさに開き始めのものがよいでしょう。
 満開のものは、すぐに散ってしまうイメージがあるので、生けるのは場合によります。

・真の花入には、一種が基本ですが、二種にして、薄板を蛤端にするのもいいようです。

・冬の時期は椿が好まれます。

・花や枝は、花入の高さの1.5倍ほどで納めると、無難です。
 『足』は、なるべく一本に見えるようにしましょう。

・生け終わったら、かならず、霧吹きで水をかけます。
 かけるときは、床の壁にかからないようにしてください。

・実践あるのみです。追々、その季節の花の種類で勉強するしかありません。

(2024.11.21 談)

はじめての軸

【床に軸をかける】 

軸は、茶席では最重要なアイテムです。
亭主からの今日の茶会のテーマやメッセージが込められています。
茶席に入り、軸を拝見して、今日の茶席の趣向を楽しみにする…のが醍醐味です。
茶席の軸は、墨蹟、消息、短冊、画賛、唐絵、和歌など各種ありますが、
禅語を書いた墨蹟が使われることが多いです。
季節感のある禅語、心根を表す禅語などがよく選ばれます。
人それぞれの経験や心情なども影響するので、禅語の解釈は難しいです。

【お茶のはじめは『一期一会』から】
 『一期一会』という言葉は、茶道の本質を表している言葉です。
 『一期』は仏教語で、一生を表します。
 茶会は、二度と同じものはなく、一生に一度の出会いであるから大切にしよう、
 という客と亭主の双方の心構えを説いています。

 利休居士の高弟であった山上宗二の書いた『山上宗二記』に利休が言った言葉として
 「一期ニ一度ノ会のヤウニ」とあります。
 それを江戸時代後期の大老で茶人でもあった井伊直弼の著書『茶湯一会集』のなかで
 『一期一会』と表現しました。

 まずは、『一期一会』を心して、茶の道を進みましょう。

(2024.11.21 談)

2024年12月6日金曜日

はじめての茶室の設え

 【はじめての床の設え】

1.茶室の大きさはいろいろあります。最初は、基本となる4畳半本勝手の席で勉強します。

2.床は掛物や花・花入を飾る場所です。いろいろな形があります。床面は多くが畳です。
 茶室を見る機会があったら、客用の入り口と床の位置、点前座の位置などに注意。

3.床には、軸(掛物)を掛けます。
 その日の茶会のテーマに沿った禅語がよく使われます。
 もっぱら、禅僧の書いたものです。
 なぜ禅語かというと、現在の茶の湯は、禅宗と深い関わりがあるからです。

4.茶の湯のおもてなしのフルバージョンは、茶事といい、4時間くらいかかるものです。
 食事と炭手前(初座)と濃茶・薄茶でのおもてなし(後座)の2パートに分かれています。
 床には、初座は軸だけ、後座は花だけというのが基本です。
 ただ、食事のない茶席では、軸と花を一緒に飾ります。床のもろ飾りと言います。

5.花入
 花入は、中釘(掛けた軸の後にあって、いつもは見えない)や床柱にかける、
 床の天井から吊るす、床に置く、という3つの方法で使います。
 材質は、金属・磁器・陶器・竹・籠製のものがあります。
 3つの格があり、金物や唐物青磁は『真』、釉薬のかかった陶磁器は『行』、
 釉薬のかかっていない陶磁器や竹・籠などは『草』です。
 畳敷きの床に置くときは、花入の格によって『矢筈板』『蛤場(はまぐりば)』
 『丸香台か木地』の薄板をおきます。ただし、籠の花入は直置きします。
 置くときは、縦に長い軸のときは、下座寄り1/3のところです。

6.花
 茶の湯は、瞬間の美をよし、とします。
 花は、かならず生花で、造花は使いません。
 今まさに開き始めのものや、茶事の最中に満開になるようなものが喜ばれます。
 素晴らしいお花が生けられているとよく「お花はご馳走ネ」と賛美します。

7.風炉先と結界
 風炉先は、四畳半以上の部屋に使われ、道具畳の向うに置かれます。
 そこが壁で囲まれている場合は、使わなくても構いません。
 結界(根竹のアレです)も風炉先の一種ですが、よく、広間で、点前座の向うに
 置いて使います。

(2024.11.7 談)

 
 

はじめてのお茶の作法

 【まずは立ち居振る舞いから(裏千家)】

1.座り方
 男性は両膝の間にこぶし2つ、女性は1つくらい開けて座ります。
 亭主のときは、手は揃えて、太ももの体から数センチ膝寄りにおきます。
 お客のときは、膝上で、右手を上にして両手を組み、自然になるように置きまか。

2.座っているときのおじぎの仕方
 おじぎには『真』『行』『草』の3つの形があります。
 いつでも両手の指先はつくところまで背中を伸ばしたまま、倒します。
 真:膝の上の両手をそのまますべらせて、両掌を畳の上に全部つくようにします。
  (総礼、お客が亭主に向かって礼をするとき)
 行:両手の第2関節まで、畳につくように。
  (客同士の礼のとき)
 草:両手の先が畳につくまで。
  (亭主が点前の途中で)

3.歩くとき
 男性は、軽く親指と人差し指を合わせ、少し内側に曲げて脇におろします。
 女性は、指をそろえ、軽く太ももにあてます。
 半畳を2歩で歩きます。

4.立ち方
 両足を爪先立てて、かかとの上に腰をのせます。片方の足をたて、まっすぐに立ちます。
 どちらの足を立てるか、は場合によります。

5.座り方
 両足を揃え、片方の足を少し引いてから、座ります。

6.扇子の置き方
 席が決まったら、右手で自分の後ろに起きます。
 正客は、扇子の先が次客のほうに、次客以降は正客に向くように置きます。

(2024.11.7 談)


 

はじめてのお茶席

 【まずはお茶席でお客になるための基本から】

・持ち物
 扇子、懐紙、楊枝、帛紗(とあれば古帛紗)を帛紗ばさみにいれて持参します。
 白い靴下を用意し、茶室に入る前に履き替えましょう。
 手拭き(ハンドタオルで可)もきれいなものを持っていきましょう。

・お正客は超ベテランの方に、お詰(末客)は経験者の方にお願いしましょう。

・茶室の入り方
 いろいろなお流派がありますので、臨機応変に対応することも大事です。
 茶室の作りにより、座る場所が違います。相客(あいきゃく)の方を見倣いましょう。
 《基本》
  入口に座って扇子を膝前に置き、襖を開けます。
  中の様子を伺い、扇子を進めながら、中へにじって入ります。
  床前に進み、扇子を前に置いて、一礼。軸とお花を拝見します。
  道具畳に進み、お釜などを拝見します。
  他の方の邪魔にならない壁側に座って、他の方が座につくまで待ちましょう。
  座が決まったら、扇子を後ろに起きます。
  茶室の中の歩き方も、注意しましょう。

・慣れないうちは、回りの方をお手本にしましょう。

・お茶席は、正客と亭主が主体です。お二人の問答を静かに聞きましょう。その上で、お道具などの聞きたいことがあったら、お正客に尋ねてもらいましょう。

(2024.11.7 談)

今日の軸:「星河清涼風」